RenderMan バージョン26
RenderManバージョン26は、アニメーションや視覚効果で幅広く使用されている、Pixar社のコアとなるレンダリングソフトウェアの最新バージョンです。このリリースでは、Pixar社の次世代レンダラーであるRenderMan XPUが大幅に進歩したことにより、インタラクティブ性とスケーラビリティが大きく更新されました。RenderMan 26には、Disney Researchによる機械学習を用いた高度なDenoiserのインタラクティブバージョンも搭載されています。さらに、このリリースには、Stylized Looksの機能とユーザーエクスペリエンスの強化、インスタンス化ワークフローの大幅な高速化、最新の3Dアプリケーションとの互換性の拡張などが含まれ、業界のプロフェッショナル向けの包括的なアップデートになっています。
RenderMan バージョン26は、メンテナンス契約が有効なお客様はダウンロード入手が可能です。
リリースハイライト
バージョン26で、Pixar社はRenderManの著しい進歩を実現しました。
- XPU技術の進歩 — Pixar社のGPU + CPUハイブリッドレンダラーが大きくアップデートされました。このリリースのハイライトには、サンプリングの改善、ライティングおよびカメラツールセットの拡張、ライトの選択が含まれており、より幅広い制作のユースケースでレンダリングが著しく高速化します。
a. ライティング — すべての分析ライトタイプ、ライトフィルター、シャドウとライトのリンク、IESプロファイル、色温度などがサポートされました。
b. カメラ — チルトシフト、レンズ収差、分割視度、シャッター制御などを含むPixar社のカメラ機能へのサポートを拡大しました。
c. 適応サンプリング — XPUにより、所定のサンプル数に完全に収束するのではなく、許容可能な分散メトリックに画像をレンダリングできるようになり、レンダリング時間が大幅に短縮されました。
d. ライトの選択 —多数のライトを配置したシーンをXPUでレンダリングできるようになり、キーやショットのライティングだけでなく、レイアウトのインタラクティブ性も大きく向上しました。
- インタラクティブなノイズ除去 — RISの使用時にKatanaとBlenderでインタラクティブに使えるようになったRenderMan Denoiserは、Disney Researchにより開発されたまったく新しい最先端のノイズ除去技術です。この技術は、 Disney社やILM社、Pixar社から提供された機械学習データとトレーニングデータを活用しています。インタラクティブなDenoiserを使用すると、インタラクティブなレンダリングセッション中にオフラインデノイザーが予測する結果を生成することにより、長編アニメーションとVFXの両方でアーティストのイテレーション時間を大幅に短縮できます。
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コアとなる改善 — RenderMan XPUとRISには、一連のコアとなるアップデートが行われ、最初のピクセルまでの時間が劇的にスピードアップし、サブサーフェススキャッタリングが改善され、USDパイプラインのサポートも強化されました。
a. インスタンス化が高速に — RISとXPUにより、多数のインスタンスが含まれるシーンの作成や編集時にパフォーマンスが大きく向上しました。
b. テクスチャの高速化 — テクスチャの読み取り並列処理が大きく改善され、特にEXRテクスチャを使用する場合、すべてのシナリオでテクスチャルックアップをより高速に実行できるようになりました。これにより、最初のピクセルまでの時間が大幅に短縮されます。
c. サブサーフェスCSG — 新しいサブサーフェスCSGワークフロー (Constructive Solid Geometry-空間領域構成法)がRIS向けに開発され、モデルをスタイリングする際の一般的な手法である、重なり合うサーフェスの外観が改善されました。
d. USDの進歩 — HoudiniのSolarisには、メッシュライトやライトハンドルのほか、アーティストを重視した、ライトフィルターを管理する新しいワークフローなど、いくつかの改善が行われました。
- スタイル化の向上— RenderManのStylized Looksの継続的な改善により、トゥーン制御の改善から新しいCanvasレイヤー、さらにアーティストに優しいユーザーエクスペリエンスを実現するUIの完全な整備まで、アーティスト向けの主要な新機能が追加されました。
追加機能
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- Progressive Pixels — XPUの部分的なイテレーションをダイヤルインすることで、より制御しやすくなりました。
- VFX Reference Platform — 2023 standardにアップデート
- CUDA — バージョン12にアップデート
ショーケース 1
XPUの進化
バージョン26では、Pixar社の次世代レンダリング技術であるRenderMan XPUが飛躍的に新しい進歩を遂げ、完全なプロダクションレンダリングに向けて重要な一歩を踏み出しました。ライトフィルターやライトリンクなどのライティングツールに対するサポートが拡張しました。
XPUは、ルックデベロップメントワークフローの枠を超えて、レイアウトだけでなく、キーやショットのライティングにも使用できるようになりました。
ハイライト:
- 分析ライト — RenderMan XPUでは、IESプロファイルや光温度などを含む大半のライティング機能がサポートされ、複雑な制作においてキーやショットのライティングツールセットを使用できます。今後のリリースではメッシュライトも使用できるようになります。
- ライトリンク — 照明の基盤です! RenderMan XPUでは、ライトとシャドウのリンクが完全にサポートされたため、ライティングを特定のジオメトリセットに独立させて、クリエイティブな制御を最大限に行うことができます。
- ライトフィルター — XPUでは、ゴボやクッキーなどのすべてのライトフィルターがサポートされたため、最大限にショットライティングを制御できるようになります。ライトフィルターをライトリンクすることもできます。
- サンプリングの改善 — ライト選択および適応サンプリングのサポートにより、アーティストは、多数のライトが使用された複雑な制作シーンでXPUを使用できるようになりました。ポータルライトのサポートにより、室内のショットを効果的にライティングすることもできます。
- カメラ制御 — XPUでは、Pixar Cameraのサポートが大幅に拡張されました。これには、チルトシフト、レンズ収差、ビネッティング、分割視度、シャッター制御のほか、Pixar社のカメラシステムを包括的な映画撮影ツールとして使用できる多数の機能が含まれています。
- インタラクティブ性 — Progressive Pixelsは、XPUで改善されたインタラクティブ性の部分的なイテレーションを表示する機能ですが、このProgressive Pixelsをダイヤルインできるようになったため、単一のアセットや数十個のボリューム、都市景観など、スピードと忠実度のバランスをとりながら、特定のプロジェクトに見合った最適な結果をもたらすことができます。
ショーケース2
インタラクティブなノイズ除去
RenderMan 26には、Disney Researchによる最先端のデノイザーのインタラクティブバージョンが搭載されています。このデノイザーは、機械学習を使用して、画像のディテールと一時的な一貫性を維持しながら、部分的に収束した画像を分解し、完全なオフラインデノイザーによるインタラクティブな結果を予測できるようになります。
インタラクティブなデノイザーはプロダクション向けで、Disney Researchが、Pixar社、Walt Disney Animation Studios (WDAS)、Industrial Light and Magic社と提携して開発しました。インタラクティブなデノイザーはオフラインデノイザーと同様の技術を使用しているため、品質に重点が置かれています。
ハイライト:
- インタラクティブ性 — RISの使用時にKatanaとBlenderで使えるデノイザーをインタラクティブに有効にして、複雑な画像のノイズを除去できます。レンダリングサンプル数が増加すると、ノイズ除去の結果が自動的に更新され、品質の向上が反映されます。
- 機械学習 — Pixar社のRenderMan Denoiserは機械学習を活用し、高い精度と一時的な一貫性を維持しながら部分的に収束した画像からノイズを除去し、完全に収束した画像とほとんど見分けがつかない最終的な画像を生成します。デノイザーは、ILM社のVFXからPixar社やDisney社の長編アニメーションまで、幅広い制作データセットでトレーニングされています。
- プロダクション証明済み — この高度なノイズ除去技術は、Disney Researchによって開発され、Pixar社、Walt Disney Animation Studios (WDAS)、Industrial Light and Magic社 での制作に使用されているため、信頼性が高く、非常に効果的であることが証明されています。
- 最高の忠実度 — AI Denoiserは、他の方法では失われる可能性のある複雑で難解なディテールを保持する点で際立っており、長編アニメーションやVFXなどの要求の厳しいアプリケーションに最適です。高い忠実度を維持しながらレンダリング時間を大幅に短縮し、業界のベテランから「魔法」と呼ばれることもあります。
ショーケース3
STYLIZED LOOKS
RenderManバージョン26のStylized Looksツールセットにより、非写実的画像の作成において、よりクリエイティブな制御ができるようになります。このツールセットの特徴には、スタイル化された結果のスムージングの改善、カラーリマッピングの新しい制御のほか、コンポジットモードと検出方法の拡張などが含まれており、トゥーン、ハッチング、ラインをスタイル化する新しい方法を使用できるようになります。ユーザーエクスペリエンスも、さらに直観的に、アーティストに優しくなるようにアップデートされました。
ハイライト:
- ライン — RenderManのStylized Looksでは、ラインを滑らかに表示できるように、ラインの検出がより簡単になり、リマッピングの制御が強化され、フィルタリング制御が追加されました。
- トゥーン — Stylized Controlツールセットには、物理ベースではない芸術的なスタイルのトゥーンモードが追加されたため、スタイル化を実現できる範囲が拡大し、アニメなどのエフェクトを簡単に作成できるようになりました。
- キャンバス — 新しい外観を構築するために(従来のメディアと同様の)スタイル化されたベースが追加されました。
- ユーザーエクスペリエンス — Stylized Looksのユーザーエクスペリエンスは、アーティストのワークフローを効率化するために引き続き改善されています。改善点としては、属性の再編成、AOVの組織化のほか、フィルタリングやスムージングエフェクトの強化などです。
ショーケース4
アーティストツール
プラグインの使いやすさと安定性を向上するために多くのアップデートが実装されました。現在進行中のUSDおよびHydraチームとのコラボレーションにより、業界標準フォーマットに対するRenderManのサポートが引き続き加速化しています。この機能強化により、制作パイプラインでRenderManを使用するアーティストは、よりシームレスなワークフローで作業できるようになります。
- ブリッジツールのアップデート — 最新の3Dアプリ-Houdini、Solaris、Katana、Maya、BlenderがRenderManによりサポートされました。 さらに、PBRワークフローを簡単に管理できる新しいパターンが追加され、全体的な安定性も向上しました。
- プリセットライブラリ — Preset Browser に同梱されているアセットのライブラリは、いくつかのStylized Looks向けの新しいコレクションの導入により拡張されました。
- ハイライト | Houdini 20 & Solaris — Solarisでの RenderManの機能は、メッシュライトやライトフィルターハンドルのマニピュレータのサポートにより改善されました。
アプリケーションの互換性と必要条件
RenderMan RISには、AVX命令セット以上を実行できる CPUが必要です。RISには8GB以上のRAMが推奨されます。
RenderMan XPUには、AVX命令セットを実行できる CPUが必要です。64ビットのLinuxおよびWindowsシステム上でGPUアクセラレーションに対応します。GPUアクセラレーションは、Pascalアーキテクチャ以降の Quadro、Tesla、またはData Center GPU相当のNVIDIAグラフィックスカードでサポートされます。11GB以上のVRAMが推奨され、最高のパフォーマンスを得るには24GBのVRAMが推奨されます。ハイブリッド (CPU + GPU) 処理には16GB以上のシステムRAMが推奨されます。ドライバー要件の詳細については、XPU Technical Specificationsをご確認ください。
NVIDIA Optix A.I. DenoiserをRenderManツールセット「it」で使用するには、Optix 7対応ハードウェア、NVIDIA Maxwell およびそれより新しいバージョンが必要です。
RenderMan は、次の 64 ビット オペレーティングシステムと互換性があります。
- Linux CentOS/RHEL 7.2+
- Windows 10 および 11
- macOS 10.15 から 13.X.Apple SiliconはRosetta 2でのみサポートされています。DCCのIntelバージョンが必要です。
RenderMan は、次の DCCツール とも互換性があります。
- Houdini 19.0、19.5および20 (プロダクションビルドのみ)
Solarisのサポートは19.5および20のみ (プロダクションビルドのみ) - Katana 5.0、6.0、6.5、7.0
- Maya 2022、2023および2024 (windowsおよびmacOS のみ)
- Blender 3.0+および4.1+
RenderMan XPUは、次の64ビットオペレーティングシステムと互換性があります。 - Linux CentOS/RHEL 7.2+
- Windows 10および11
RenderMan XPUは、GPUアクセラレーションモードについて以下と互換性があります。 - NVIDIA「Pascal」アーキテクチャ以降。
- Linux向けドライバーは525.60.13以上が必要です。Windows向けドライバーは527.41以上が必要です。
教育用アセット
バージョン26のリリースは、新しいEducational Lessons & Assetsで補完されます。
- チュートリアル | Maya用のRenderMan > Baba Yagaの作成
- チュートリアル | Katana用のRenderMan > Bazの製作
- チュートリアル | スタイル化入門 > ピクサーボールのスタイル化
Pixar Animation Studiosについて
The Walt Disney Company の完全所有子会社である Pixar Animation Studios は、アカデミー賞を受賞した映画スタジオであり、コンピューターアニメーションの分野で世界的に有名な技術、創造性、制作能力を備えています。北カリフォルニアのスタジオにおいて、『トイ・ストーリー』、『モンスターズ・インク』、『カーズ』、『Mr.インクレディブル』、『レミーのおいしいレストラン』、『ウォーリー』、『カールじいさんの空飛ぶ家』、『メリダとおそろしの森』、『インサイド・ヘッド』、『リメンバー・ミー』、『私ときどきレッサーパンダ』など、史上最も成功し愛されているアニメーション映画を制作してきました。その映画とテクノロジーは 40ものアカデミー賞を受賞しており、映画の全世界の興行収入は 140億ドルを超えています。Pixar社の第28作目である『インサイド・ヘッド2』は、米国で2024年6月14日に公開、日本では8月1日に公開予定です。
RenderManについて
RenderManは、Pixar Animation Studiosが開発した最先端のレンダリングソフトウェアです。これは、長編映画のアニメーションやVFXで高品質のビジュアルを作成するための、アカデミー賞を受賞したソリューションです。1989 年の最初のリリース以来、RenderMan は最新の技術的および創造的な課題に対応するために進化してきました。現在では、比類のない芸術的なコントロールで見事な画像を提供できる最先端のレイ トレーサーとなっています。 RenderMan は、『マイ・エレメント』、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』『トップガン マーヴェリック』など、多くの大ヒット映画で使用されています。RenderMan は、アーティストにインタラクティブなシェーディングのための合理化されたワークフローを提供します。信頼性と拡張性に関するソフトウェアの評判を維持しながら、照明、外観の開発を行います。このソフトウェアは、Autodesk Maya、SideFX社のHoudini、Foundry社のKatana、 Blenderなどの一般的な 3D ソフトウェアとシームレスに統合するための完全に統合されたプラグインを提供します。スタンドアロンのレンダラーとしても使用できます。創造性と柔軟性に重点を置いた RenderMan は、比類のない芸術的なコントロールを提供し、映画業界のアーティストにとって頼りになる選択肢となっています。