Pixar RenderMan XPU™ について全3回にわたり掲載します。今回は3回目(最終回)です。(1回目 / 2回目)
RenderMan XPU™とRISの画質比較やサンプルシーンを用いたルックデブを行います。

1回目 RenderMan XPU™のメリットや使用要件等について紹介
2回目 RenderMan XPU™の検証
・3回目 RenderMan XPU™とRISの画質比較やサンプルシーンを用いたルックデブ

XPUとRIS画質比較

レンダリング設定が同じ場合、明らかにXPUの方が速いということはわかりましたが、ではそのレンダリングされた画像に違いはないのでしょうか。RISとXPUそれぞれのレンダリング画像を横並びにしてみました。

このように見比べてみると分かるのですが、ライトの明るさが若干異なります。今回のシーンで使用しているライトはドームライト1つとエリアライト1つだけのシンプルな状態です。マテリアルの再現性はどちらも変わらないように見えるのですが、透過屈折を伴うガラスの質感の場合はガラス自体の色や影の色などに明らかな差が見られました。また同じサンプリング設定でもノイズの出方が若干異なっています。

これらを見るとRISとXPUでまったく同じにはなっていないと思われるかもしれませんが、Pixar自身もXPUの説明の中で、現在のXPUは最初のリリースであり、ルックデベロップメントとシェーダオーサリングの作業のイテレーションを加速するというというところに焦点を当てており、プロダクションレンダリングに取って代わるものではないと言っています。ですので、XPUではサポートされていないパラメータや設定がまだいくつかあり、そのリストも明示されています。
機能と制限 (pixar.com)

サンプリングについてもXPUではアダプティブ サンプリングをサポートしていないため、デフォルトの設定では実はRISの方が有利に働くようになっているのです。
しかしながら、そのレンダリングパフォーマンスは圧倒的であり、GPUとCPUどちらのパフォーマンスも生かせるため、ハードウェアを無駄に遊ばせるということもなくなります。

HoneyBee ルックデブ

それらのことを承知うえでPixarが配布しているサンプルシーンを使ってルックデブを行ってみました。この蜂のモデルはMayaのXGenを使って体毛を生やしています。

レンダリング時間は以下の通りです。

  • RIS
    AMD Ryzen5900X 256 Sampling 14m34s
    AMD Ryzen5900X 512 Sampling 28m59s

  • XPU(GPU+CPU)
    Nvidia RTX 3060 + AMD Ryzen5900X 256 Sampling 3m51s
    Nvidia RTX 3060 + AMD Ryzen5900X 512 Sampling 7m18s

XGenを使用したキャラクターのルックデブを行ってみました。光の拡散具合に若干の差異が生じていますが、こちらも4倍近いレンダリング速度となっています。

プロダクションレンダリングに使用できるか

RenderMan XPU™はまだ最終レンダリングに使用しないようにとPixarはアナウンスしています。それにはいくつか理由があります。

  • 対応していないマテリアル(Luma Shader,MaterialX)
  • 対応していないライト(Mesh Light、Light Portal、Light Link)
  • 対応していないジオメトリ(NURBS、ネスト化された誘電体)
  • 対応していないレンダリング設定(アダプティブサンプリング、ロシアンルーレット、個別のレイデプス)
  • 対応していないインテグレータ(PxrUnified、PxrVCM)

代表的なものだけでこれらの機能をXPUは扱うことができません。最初に記述したようにRenderMan XPU™はまだ最初のリリースを迎えただけなので、最も効果的なシェーダーオーサリングとアセットルック開発に使用するようにと推奨されています。しかし、RenderMan XPU™の開発は継続的に行われていくということですので、将来的にはREYSからRISの時がそうであったように、RISに取って代わるプロダクションレンダラーとなることを期待したいと思います。その時にはこのようなシーンを何倍もの速さでレンダリングすることができるようになるでしょう。

RenderManについて

RenderManはハリウッド映画において、実写合成やリアリティを優先したプロフェッショレンダラーです。常にトップクオリティが求められるハリウッドニーズと技術が凝縮しています。RenderManは特に3Dアニメーションと視覚効果(VFX)のレンダリングにおいて大きな目標を達成するために設計されました。その結果RenderManは高速で効率よく最先端の機能を提供すると共に複雑なジオメトリを大量に取り扱うことができます。