CGに興味がある人やそれを生業としている人でRenderManの名称を知らない人はいないでしょう。しかし、実際にRenderManを使ったことのある人はそれに比べて圧倒的に少ないはずです。様々な映画で使用されRenderManの名が知れ渡った頃、CGツールには別のレンダラーが標準搭載されており、RenderManによって作られた映画にあこがれながらも、それとは異なるレンダラーを使うことが半ば常識になってしまったのです。しかし、時代は流れ、あこがれだったRenderManもバージョン21から過去のRAYS遺産に別れを告げ、最新の物理ベースレンダラーへと変貌を遂げています。価格もこなれていることからDCCツール付属のレンダラーとは別の選択肢の一つとして有力な候補になっていることは間違いないでしょう。

そんなRenderManの最新バージョン22.5 を徹底的に検証していきます。現在RenderManはMaya,Houdnini,KATANAで使えるように最適化されています。昔からMayaベースに運用されてきただけあって、インテグレート度合いはデフォルトのArnoldを超えているところもあります。早速インストールしてみていきましょう。

インストール

RenderManのインストーラーはフルインストーラーとなっていて、対象となる全てのアプリケーションに自動的にインストールされますので特に面倒な設定は必要ありません。Mayaを立ち上げ、プラグインマネージャーでRenderManプラグインを読み込むとGUI上にRenderManメニューとRenderManシェルフが表示されます。

レンダー設定から使用するレンダラーをRenderManに切り替えることができますので、これでRenderManを使う準備は完了です。

リソース

その最先端の機能だけではなく、何よりRenderManが素晴らしいのは丁寧に解説されたマニュアルと、ダウンロードして自由に使える豊富なリソースファイルです。早速こちらにあるリソースからオフィシャルスウォッチシーンファイルをダウンロードして試してみましょう。

https://renderman.pixar.com/community_resources

RenderManのマテリアルは多数の専用シェーダーが用意されています。そして他のレンダラーと比べても圧倒的に機能も豊富なためその解説は次回に譲るとして、ここではプリセットブラウザーと呼ばれるマテリアル集を使用してみましょう。シェルフかメニューからこのようなプリセットブラウザーが呼び出せます。さらに先ほどのリソースファイルにも新たなマテリアルが用意されているので、ダウンロードして追加することもできます。

任意のマテリアルをダブルクリックすれば、Mayaのハイパーシェードに登録されますので、ティーポットに割り当ててレンダリングしてみます。

CPUとGPU

RenderManはCPUを使用するタイプのレンダラーです。現在のRenderManはレイトレーサーなので、過去のRenderManとは異なり、CPUコアが多ければ多いほどレンダリングパフォーマンスは上がります。しかし巷ではGPUを使ったパフォーマンスの高いレンダラーが登場しています。そんな状況を踏まえて、PixerではCPUとGPUを混在して使用できるRenderMan XPU と呼ばれる新しい技術を開発中です。CPUかGPUではなく、どちらもプロダクションレンダラーとして使用できるタイプのハイブリッドレンダラーです。もうしばらくすると一般ユーザーでも使用できるようになるはずです。

https://youtu.be/obwTJQP7NEc

IT

RenderManは上記のようにビューポート上でもレンダリングを行うことができますが、ITと呼ばれる専用のレンダービューが搭載されています。RenderManシェルフのレンダーボタンをクリックするとITが立ち上がり、レンダリングが始まります。

ITではこのようにワイプを使ってレンダリング結果を比較したり、

2つのビューウインドを使って比べることもできます。

また、ITならではの機能の一つにこのようなカラーチャートを表示することができます。

デノイズ

最近はやりのデノイザーももちろん搭載されています。

レンダー設定のAOVsにてDenoiseをONにしてレンダリングすると、後からIT上でデノイズを切り替えて比べることができます。

 

 

インテグレータ

RenderManの特徴のひとつは何と言ってもインテグレータです。インテグレータとは演算装置、平たく言えばレンダリングアルゴリズムのことです。一昔前は複数のレンダリング方法を搭載したレンダラーが当たり前でした。それは、今日のように複数のコアを搭載したパフォーマンスの高いコンピュータがなかった時代、貧弱な演算リソースでなんとかリアリティーのあるレンダリングを行おうと苦心した歴史がありました。計算負荷の高いレイトレースを行わないレンダラーやグロバールイルミネーションを近似値でごまかそうとしたバイアスなGIレンダラーなどです。時代は進み、コンシューマー用CPUでも16コアを搭載しようとしている現在ではパストレーシングによるアンバイアスなグローバルイルミネーションが当たり前になっています。RenderManに話を戻しますと、これまでのパストレーサーを超えるPxrVCMと呼ばれる双方向追跡型パストレーサー、そしてそのVCMとこれまでの単方向パストレーサーをマニホールドウォークと呼ばれるマニホールドネクストイベント推定技術を使用して融合させたPxrUnifiedという新しいレンダリングアルゴリズムが搭載されているのです。

 

まずはそのインテグレータの種類と違いを見ていきましょう。
インテグレータはレンダー設定のSamplingタブで切り替えることができます。

PxrDefault

最初に選択できるインテグレータがこのDefaultです。デフォルトライトだけでレンダリングされるシンプルなインテグレータで任意に配置されたライトは考慮されないため、問題が発生している場所を絞り込むのに役立ちます(たとえば、障害が照明にある場合など)。

PxrDirectLighting

ライトの直接照明部分のみを計算するデバッグまたは「ドラフト品質」インテグレータです。 「最終品質」の画像を作成するようには設計されていません。 間接的なライティングパスは実装されていないため、反射、屈折、またはその他のグローバルイルミネーションエフェクトを生成することも、ボリュームインテグレータを必要とするエフェクトを処理することもできません。

PxrOcclusion

周囲のオクルージョンをレンダリングするために使用できる非写実的なインテグレータです。物理ベースのインテグレータを使用してレンダリングする場合、オクルージョンは当然ライティング計算の一部であることに注意することが重要です。これは、隅、割れ目、亀裂などで間接光または「周囲」光が遮られて暗くなったりすることによる影響です。

PxrPathTracer

PxrPathTracerはRenderManの中核となる最終品質のインテグレータです。フォワードパストレースアルゴリズムを実装しています。これは屋外の非常にスペキュラの高いシーンで効果的です。単純なアルゴリズムは使いやすく、そして実行しやすくなります。欠点としては、特にコースティックイルミネーションが大きいシーンでは収束速度が遅いことがあります。

PxrVCM

PxrVCMはRenderManの中核となる最終品質のインテグレータです。双方向パストレースとプログレッシブフォトンマッピング(頂点マージとも呼ばれる)を組み合わせたものです。これらの各手法は、純粋な順方向経路追跡アルゴリズムよりも効率的に特定の範囲の光輸送経路を捕捉する能力をもたらします。

PxrUnified

PxrUnifiedはピクサーがオリジナル映画作品で使用しているインテグレーターです。これはマニホールドウォークと呼ばれるマニホールドネクストイベント推定技術を使用して、より速いコースティクスと共にフォワードパストレースアルゴリズムと双方向選択の両方を実装しています。また 、シーンのより明るい部分やより重要な部分からサンプリングすることで間接照明を向上させる間接誘導のオプションも含まれています。

PxrVisualizer

PxrVisualizerはジオメトリを検査するために使用できるユーティリティーインテグレータです。陰影付き、平面、法線、標準、ワイヤフレームなど、さまざまなスタイルの表示が可能です。

デバッグ用のインテグレータは別として、RenderManにはパストレーサーより一歩進んだレンダリングアルゴリズムが搭載されていることがお分かりいただけたでしょうか。

次回はこのPxrVCMそしてPxrUnifiedについて掘り下げていきたいと思います。

文責 澤田友明(COLOSSUS R-studio)