【Pixar社】RENDERMAN 27｜XPU 時代の幕開け

リリースハイライト

XPU の機能強化

• ■ 最終フレームレンダリング： XPUアーキテクチャが最終フレームレンダリングに対応し、アーティストはCPUとGPUの両方のリソースを活用して効率的に高品質な画像を生成できるようになりました。この抜本的な変化により、レンダリングのインタラクティブ性とスケーラビリティが向上し、XPUは将来のRenderMan開発の中核となります。
• ■ インタラクティブなノイズ除去： インタラクティブなノイズ除去機能により、レンダリングセッション中の反復処理時間が大幅に短縮されます。この機能は複雑なライティングやシェーディングの設定に取り組むアーティストにとって特に有益で、最終画像の忠実度を維持しながら迅速なフィードバックを得ることができます。
• ■ チェックポイント： チェックポイント機能の導入により、アーティストはフレームの一部をチェックポイントとして出力できるようになり、生産効率が向上します。
• ■ コンポジット： 既存のLPE（Light Path Expressions）サポートに加え、XPUにはマット、ホールドアウト、拡張されたAOVオプションなど、VFXに必要な追加のコンポジット機能が加わりました。Cryptomatteも今後のマイナーリリースで利用可能になる予定です。これにより、コンポジットパイプラインが大幅に改善され、画像の構成に対するきめ細かなコントロールが可能になります。
• ■ ディープデータワークフロー： XPUはディープデータワークフローをサポートし、複雑なボリュームや透明オブジェクトの精密な合成が可能になりました。OpenEXRのDeep IDにも完全対応しており、データの抽出が効率化され、コンポジットの柔軟性が向上しています。
• ■ Stylized Looks： XPUでStylized Looks™ツールセットが拡張され、絵画調、トゥーンシェーディング、スケッチ風のレンダリングなど、多彩なノンフォトリアリスティック表現が可能になりました。これにより、従来のフォトリアリズムを超えたスタイルを追求するアーティストに、さらなる創造の可能性がもたらされます。
• ■ OSLディスプレイ&サンプルフィルター： Open Shading Language (OSL)によるディスプレイフィルターとサンプルフィルターがXPUに統合されました。これにより、シェーディングのカスタマイズ性が向上し、アーティストによる制御が強化され、制作ワークフローの効率も高まります。
• ■ メッシュライト： XPUでメッシュライトがサポートされ、物理的なライトタイプの使用が可能になり、ライトとしてジオメトリを使用する際の柔軟性が大幅に向上しました。
• ■ MaterialX Lama： XPUでMaterialX Lamaがサポートされ、Industrial Light & Magicのシェーディングツールセットによってアーティストのワークフローが大幅に強化されます。
• ■ ルック開発関連の機能拡張： ネスト化インスタンシング、OSLの改良（trace・getattribute対応）、内部ボリュームのアグリゲート、ガラスおよび単一散乱の強化により、XPUはRISにさらに近いものとなり、ルック開発の幅が広がってレンダリングアーキテクチャ間の一貫性が確保されます。
• ■ マルチGPUサポート： マルチGPUのサポートにより、XPUはCPUと複数のGPUを同時に活用できるようになりました。これによりハードウェア資源の利用が最適化され、レンダリングリソースを最大限に活用できます。
• ■ MaterialX： 基本的なMaterialXのBSDFノードおよびAddやMix（MaterialXAdd、MaterialXMix）といったユーティリティ／コンバイナノードの初期サポートが追加されました。Solarisではサポートが限定的となっていますが、将来のリリースでMaterialXの完全サポートとMaya向けLookdevXのサポートが提供される予定です。

インテグレーションおよびパイプライン

• ■ Solaris — Solaris のサポートが拡張され、UI が改善されたほか、パイプラインとの統合がさらに深まりました。
• ■ DCCサポート — 最新のデジタルコンテンツ制作ツールとの完全な互換性を確保し、業界標準の主要ツール全般にわたり堅牢なサポートを提供します。

追加機能

• ■ VFXリファレンスプラットフォーム2024準拠 — RenderMan 27 は VFXリファレンスプラットフォーム2024 に準拠しており、業界標準のプロダクションパイプラインとの互換性・安定性・統合を保証します。また、Houdini 21.0 のように VFXリファレンスプラットフォーム2025 を使用する特定のアプリケーションリリースとの将来的な互換性も提供します。

RISアップデート

• ■ サポート＆メンテナンス — RIS は RenderMan 27 で引き続き使用可能ですが、将来のリリースで廃止される予定です。そのため、新規プロジェクトでは XPU の採用が推奨されます。

技術的な強化

Bridge Products（ブリッジ製品）

• ■ テクスチャマネージャー はミップマップ化されたテクスチャの変換にデフォルトで OpenImageIOを使用するようになり、処理時間が大幅に短縮されました。この変更により、Pixarの従来のテクスチャ形式は業界標準の OpenEXR形式に置き換えられました。互換性のために、Pixarのテクスチャ変換ツール txmakeも引き続き同梱されます。

レイトレーシングの改善

相対的なピクセルのばらつきと最小サンプル数がオブジェクト単位で XPUに実装され、適応サンプリングの精度がさらに向上しました。

• ■ 極端な並列レイトレーシング条件下でもジオメトリが正しく処理されるよう、GPUレイトレーシングの精度に関する不具合が修正されました。

ジオメトリとシェーディングの強化

• ■ ネストされたインスタンス化が完全にサポートされ、インスタンス間でのマテリアル継承や属性伝播が可能になりました。
• ■ サブサーフェススキャッタリングが改善されました。ノイズが減少し、複数のローブを持つ表面に対する重要度サンプリングが向上したことで、収束がさらに速くなりました。
• ■ ガラスおよびボリューム内の単一散乱が改良され、より正確な屈折、シャドウ、および減衰効果が得られるようになりました。
• ■ 新しい OSL トレース機能が追加され、PxrDirtをはじめとする他のプロシージャルシェーディング手法との相互作用が改善されました。
• ■ 髪や毛のレンダリング品質が向上し、特に非常に細い毛の収束が Min Width（最小幅）のサポートによって大幅に改善されました。
• ■ サブディビジョンメッシュの法線が改善され、特にセミシャープなクリース近辺での品質が向上しました。

ボリュームとライティング

• ■ XPUで、内部ボリュームのアグリゲートが完全にサポートされ、濁った液体や半透明の結晶のような非常に複雑なマテリアルでも効率的にレンダリングできるようになりました。
• ■ XPUのライトフィルタにおいて、特定の減衰設定やカラースプライン設定に関する問題に対処しました。
• ■ PxrPathTracerの機能が強化され、clampDepth および clampLuminance パラメータがサポートされました。

イメージ出力と AOV

• ■ XPUで Deep OpenEXRをサポートし、OpenEXR 3.0形式の ID マニフェストを自動生成できるようになりました。
• ■ ディープデータの制御が拡張され、アーティストがディープシャドウの誤差パラメータを直接設定できるようになりました。
• ■ Matte objectのサポートとホールドアウトワークフローが強化され、マルチパスレンダリングでのコンポジットや統合が向上しました。
• ■ 多数の AOVや Ptexを多用するシーンにおいて、特にカメラを動かしてビューを回転させる際のインタラクティブなパフォーマンスが大幅に向上しました。

ノイズ除去とパフォーマンス最適化

デノイザー（denoiser）は基本的な処理時間の統計情報を出力するようになり、最新のパイプライン向けに設定の柔軟性が向上しました。

• ■ XPUにおけるメモリ割り当てが改善され、テクスチャキャッシュのサイズを動的に調整することでリソースを効率的に活用できるようになりました。

互換性と要件（Compatibility & Requirements）

• ⚠️ RenderMan RIS には AVX 命令セットを実行可能な CPU が必要です。
• 💾 RIS を利用するには最低 8GB の RAM を推奨します。

🖥️

XPU 推奨動作環境

RenderMan XPU を利用するには AVX 命令セットを実行可能な CPU が必要です。また、64 ビット版 Linux および Windows システムで GPU アクセラレーションをサポートします。GPU アクセラレーションは NVIDIA の Quadro、Tesla、またはデータセンター向け GPU シリーズのグラフィックスカード（Pascalアーキテクチャ以降）でサポートされます。VRAM は最低 11GB を推奨し、最良のパフォーマンスのために 24GB の VRAM を推奨します。CPU + GPU のハイブリッド処理には、システム RAM は最低 16GB を推奨します。ドライバー要件の詳細については、XPU の技術仕様書をご参照ください。RenderMan の画像ビューワ「it」で NVIDIA OptiX A.I. デノイザーを利用するには、OptiX 7 をサポートするハードウェア、すなわち NVIDIA の Pascal（パスカル）世代以降の GPU が必要です。

■ RenderMan RIS 対応 64 ビットオペレーティングシステム

対応 OS	Linux EL9 Windows 11 macOS Monterey(12.x)、Ventura(13.x)、Sonoma(14.x)

■ RenderMan RIS および XPU 対応 DCC（Digital Content Creation）

対応 DCC	Houdini　20.0、20.5、21 （商用版のみ） Katana　7.0、7.5、8.0 Maya　2024、2025、2026 Blender　3.6 以降、4.1 以降

■ RenderMan XPU 対応 64 ビットオペレーティングシステム

対応 OS	Linux EL9 Windows 11

■ RenderMan XPU 対応 GPU

対応 GPU	NVIDIA 「Pascal（パスカル）」アーキテクチャ以降 （ドライバー要件）Linux ではバージョン 570.124.06 以上、Windows では 572.61 以上

XPUのための教育

🎓

バージョン27のリリースに伴い、ピクサーは公式オンラインキャンパス「RenderMan University」を再始動しました。このキャンパスは、あらゆるレベルのアーティストがRenderManを使用してVFXやアニメーションにおけるシェーディング、ライティング、レンダリングを習得できるよう支援する場です。

📚

RenderMan Universityには、ピクサー社内のトレーニングから生まれた豊富なレッスン、アセット、プロジェクトのライブラリが揃っています。そして、教育を通じて芸術とテクノロジーを結びつけるというピクサーの使命を引き続き体現しています。

RenderMan University（英語）はこちらから

新たな基準

🚀

RenderMan 27は、この10年以上で最も重要なリリースです。画期的なパフォーマンス、インタラクティブ性、そして創造性に対する高度なコントロールを実現しました。また、XPUによる最終フレームレンダリングへの対応、ディープコンポジットのワークフロー、さらに拡張された制作向け機能によって、Pixarはハイエンドな長編アニメーションやVFXのためのレンダリング技術を再定義し続けています。

詳細な技術解説についてはこちら (英語)をご覧ください。
ライセンスに関するお問い合わせは こちらまでご連絡ください。

Pixar Animation Studios について

🎬

ピクサー・アニメーション・スタジオは、ウォルト・ディズニー・カンパニーの完全子会社であり、アカデミー賞®受賞歴を持つ映画スタジオです。その卓越した技術力、創造力、制作力によって、コンピューターアニメーションの分野で世界的に知られています。

北カリフォルニアに拠点を置く同スタジオは、史上最も成功を収め、愛されている数多くのアニメーション映画を生み出してきました。代表作には『トイ・ストーリー』、『モンスターズ・インク』、『カーズ』、『Mr.インクレディブル』、『レミーのおいしいレストラン』、『ウォーリー』、『カールじいさんの空飛ぶ家』、『メリダとおそろしの森』、『インサイド・ヘッド』、『リメンバー・ミー』、そして『マイ・エレメント』があります。これらの作品とその技術により、ピクサーはアカデミー賞®を累計40回受賞しており、映画の世界興行収入は150億ドルを超えています。また、ピクサーの長編映画第29作となる『星つなぎのエリオ』が現在Disney+で配信中です。

PixarのRenderManについて

🖥️

RenderManはピクサーのプロダクション・レンダラーであり、「トイ・ストーリー」以来、すべてのピクサー作品で使用されています。もともと最先端技術によって映画の映像表現を実現するために開発され、「アビス」や「ターミネーター2」、「ジュラシック・パーク」、「アバター」といった歴史的映画の視覚効果にもRenderManが採用されてきました。

現在のRenderManは、XPUと呼ばれる最新のCPUとGPUのハイブリッド・アーキテクチャを備えており、完全に再設計されたこの仕組みによりインタラクティブな速度と高品質な最終フレーム・レンダリングを両立しています。さらに、長編アニメーションや視覚効果の要求に応えるために構築されたRenderManは、アートとサイエンスの交差点で進化を続け、高度なワークフロー、スタイライズ表現、オープン標準をサポートしています。また、30年以上にわたり業界で使用されてきたRenderManは、世界中のスタジオ、アーティスト、ストーリーテラーから今なお信頼され続けています。

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