1. はじめに

1. はじめに
RenderMan 27.1 は、XPU/RIS の両レンダラーおよび主要DCC連携に対して、安定性・互換性・運用上の改善を中心に反映したアップデートです。この記事では、リリースノートに記載の変更点をカテゴリ別に整理します。

2. XPU:主な修正と改善

2. XPU:主な修正と改善
2.1 General
インタラクティブ環境で AOV の追加・削除や レンダーバリアントの切り替えを行う際に、散発的にクラッシュする可能性があった不具合を修正しました。(RMAN-24274)
2.2 Image Outputs and Displays
XPU が ユーザー指定のチェックポイントコマンドを、各チェックポイント後だけでなく レンダリング成功後にも実行するようになりました。これは RIS の挙動と一致します。(PRMAN-2979, PRMAN-3467)
⚠️ 注意(ABI 互換性):renderoutput.hRenderOutput 構造体に ABI 非互換の変更が入りました。API バージョン自体は変更されていないものの、display.h に定義される XPU Display API を利用するプラグインは 再コンパイルが必要になる場合があります。
2.3 Geometry
シェーディング法線に関して、プリミティブ変数とユーザー属性の両方が存在する場合にクラッシュする可能性があった不具合を修正しました。(RMAN-24225)
2.4 Lighting
XPU の Cylinder Light における放射輝度推定(radiance estimate)に起因してアーティファクトにつながる可能性があった不具合を修正しました。(RMAN-23866)
2.5 Shading
General(PxrSurface / PxrDisneyBsdf)
  • dfmp 0(= sss が実質 diffuse reflection として扱われるケース)において、PxrSurface / PxrDisneyBsdf(RIS と XPU の両方)で、サブサーフェス相当部分に対する バンプマッピングが扱えるようになりました。従来は RIS の PxrSurface のみが正しく処理できていました。
MaterialX Lama
  • XPU Lama において、特定の Lama ベースノード( LamaDielectric, LamaGeneralizedSchlick)が LamaLayer のトップマテリアルに接続されたときに吸収挙動が変化する “coating” 機能をサポートしました。(RMAN-24241)
  • combiner network 内で LamaSSS が誤った subset を計算し、結果が黒くなる問題を修正しました。(RMAN-24280)
  • Lama シェーダー処理に必要な GPU メモリを削減し、GPU 上で 380MB 節約しました。(RMAN-24255)
  • combiner network 内での LamaSSS の重要度(importance)ウェイトが不正確で、期待より暗くなりやすい問題を修正しました。特に LamaLayer ネットワークで顕著でした。(RMAN-24242)
  • LamaTranslucent を含む Lama の組み合わせ(LamaMix, LamaAdd, LamaLayer)が、より明るくなり RIS と一致するようになりました。(RMAN-24245)
2.6 Statistics
iteration 終了時の stats イベントで、アクティブピクセル数が正しく報告されない不具合を修正しました。(RMAN-18453)

3. RIS と XPU:共通の改善

3. RIS と XPU:共通の改善
3.1 Statistics(Live Stats)
Live Stats の概要ウィンドウに、iteration 数に加えて アクティブピクセル数が表示されるようになりました。(RMAN-24217)
レンダリング停止後に、DCC 側の Live Stats パネルのデータが消去される不具合を修正しました。(RMAN-24223)
3.2 Texturing
「Max Resolution」がテクスチャを過度にシャープにフィルタリングしてしまう問題を修正しました。(RMAN-24191)
  • RenderMan サンプルの PxrOSLTexture.h について:TxParamwidthswidthtwidth に分割されました。該当パラメータを直接使用している場合は、旧版の PxrOSLTexture.h を使用するか、OSL 側の更新が必要です。

4. RIS:主な修正と改善

4. RIS:主な修正と改善
4.1 Lighting
低確率(low probability)のライトクラスター内で、ミュートされたライトが正しく無効化されない不具合を修正しました。
ポータルライトがテクスチャの黒い領域しか見ていない場合に、テクスチャ全体を無視してしまい、ドームライトが「テクスチャなし/一定色」のように振る舞う問題を修正しました。(RMAN-24057)
4.2 Shading
  • 法線作成ワークフローを支援する新ノード PxrFloatToNgPxrNgToNormal を追加しました。(RMAN-23877)
  • PxrLayerSurface に iridescenceBumpNormal のサポートを追加しました。(RMAN-23940)
  • Lama に “Position” LPE Lobe のサポートを追加しました。(RMAN-23822)
  • PxrPrimvar は int オプション選択時に int の primvar を出力するようになりました。(RMAN-23586)

5. DCC 連携アップデート

5. DCC 連携アップデート
5.1 RenderMan for Blender
複数回レンダリング時に AOV が正しくレンダリングされない問題に対処しました。(RMAN-24314)
IPR を “it” に出力している際に、レンダーバリアントの切り替えが機能しない問題に対処しました。(RMAN-24284)
Geometry Nodes 経由のオブジェクトインスタンスについて、IPR 中のトランスフォームに関して問題が生じる可能性があった不具合を修正しました。(RMAN-24277)
PxrRamp ノードのクローン/コピーで Blender がクラッシュする問題に対処しました。(RMAN-24315)
5.2 RenderMan for Houdini
  • Houdini 21.0.559 のプロダクションビルドをサポートしました。(RMAN-24320)
  • args2hda が、空文字列比較において無効な disable/hidewhen 条件を生成する問題を修正しました。(RMAN-24210)
  • HdPrman が USD 25.05 環境(および旧USD版の Solaris 環境)で、フレーム番号を自動設定するようになりました。(RMAN-24133)
  • USD プラグインは dsolib ではなく dso フォルダに配置されるようになりました。(RMAN-19584)
  • LamaLayer の passthrough が materialBottom を使用するようになりました。(RMAN-24040)

まとめ

まとめ
RenderMan 27.1 は、XPU の安定性や Lama を中心としたシェーディング改善、Live Statsテクスチャリングの基盤強化、さらに BlenderHoudini 連携の不具合修正と運用改善がまとまったリリースです。特に ABI 非互換の注意点(XPU display API 周り)と、OSL ヘッダー変更(TxParam の分割)は、パイプライン側での確認事項として押さえておくと安心です。
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