今回は GaeaCellular3D ノードを手短に紹介します。前回は「Trees(樹木)」ノードを次に扱うと予告しましたが、新機能の実装作業の都合で、そのノードを解説できる状態になるまで少しだけ保留します。そこで今回は代わりに Cellular3D を取り上げます。
Gaea ノード:_Cellular3D
見た目はシンプルですが、面白さは発想次第です。Cellular3D は非常に高速で、数理的かつランダム性のある独特の形状を生み出せます。各軸ごとに乱れを加える Jitter、各軸の Scale、そして GapSize のような基本パラメータを備えています。私が感じるこのノードの強みは、とにかく処理が速いことと、他では得にくいユニークな形が簡単に得られることです。パラメータをざっと見ると、Size は形全体のスケール、Gap は 0 より大きくすると各セル(ブロック)の間に隙間が生じ、そこからクールな形が作れます。Gap は外部入力でマスク制御もでき、白黒マスクで「どこをどれくらい開けるか」を指定できます。Jitter は各軸方向に点群を揺らして形をランダム化し、たとえば Z のみオンにしてから他軸のジッターを足していくと、格子状だった形が押し引きされて個性的な輪郭になります。Seed で乱数を切り替え、Normalize は入力形状を 0〜1 の標準レンジに合わせ直すため、極端な入力でも Cellular3D の追従性が高まります。
ここからいくつかの作例です。まずは岩のデブリ(岩屑)フィールドです。複数の Cellular3D を重ねて軽く Gap を入れ、Warp で崩し、Seamless でタイラブル化してから Repeat で広域に敷き詰め、最後に任意の形状へ Transpose します。大きめのセルと小さめのセルを Max 合成で重ねてワープするだけで岩っぽい塊になり、それを転写して広大なデブリ原が得られます。岩専用のノイズやシミュレーション寄りの手法もありますが、Cellular3D のような数式ベースの生成はとにかく高速で、PBR テクスチャのベースや地形上の岩場の敷設に極めて実用的です。タイル化の工程(Seamless → Repeat)や、形状を別の地形へ転写する TransposeGaea の標準ワークフローとして公式ドキュメントに解説されています。
次に、乾燥地割れ(Drought Cracks)の作り方です。Cellular3D ノードでセル間の Gap をやや大きめに設定し、Height Remap で標高レンジを圧縮して全体をフラット寄りに整えたのち、Warp で自然な歪みを加え、その結果を Transpose で任意のベース地形へ表面転写します。これは写真と完全一致の写実を即座に狙う手法ではありませんが、乾いた河床に見られるひび割れ表現の堅実な出発点となり、後段の侵食処理やテクスチャ作業とも相性が良好です。とりわけ Transpose は、ある地形の表面形状を別の地形に転写しつつターゲット側の体積を保てるため、既存のベースと組み合わせて短時間で多様なバリエーションを展開できます。
三つ目はローポリのロックベースです。Radial Gradient をベースにエッジをさらに平坦化し、Normalize をオンにした Cellular3DSize=0.05 程度にすると、螺旋状のローポリ岩ベースが得られます。Houdini などに持っていってリメッシュしてスカルプトを続ける土台にも向きます。ここで注意したいのは、Gaea はハイトマップなので垂直面ではバンディング(段差状の縞)が出やすいことです。ディテールを足す前に少し Blur して垂直すぎない面を作ると、その後の細部追加が効きやすくなります。ハイトマップの処理上、マスクで上部だけ効果を抑える・局所的に処理を適用する、といった考え方は公式ガイドにもあります。
四つ目は果てしなく続く岩砂漠です。Cellular3D のベース形状に強めの Erosion をかけるだけで、自然界にはなさそうな基礎形の「不自然さ」と侵食の流れが合わさって、孤絶した荒野のムードが出ます。Erosion の世代は Gaea 2.x で刷新され、Erosion_2 は大幅に強化されました。
五つ目は一瞬で街並みの作り方です。山のような大まかな形を Cellular3D に通して Gap を大きくすると、都市のビル群のようなシルエットになります。背景用の簡易シティスケープを急ぎで用意したいときに有効です。屋根の傾きは Jitter でコントロールできます。
六つ目はエイリアンの谷です。峡谷を Cellular3D に入れ、Blur → Warp で岩のディテールを作り、低い RidgeMax 合成して床を形成し、Erosion で仕上げます。地球らしさは薄いものの、迷路状で岩がせり出した異世界のセットピースができます。
七つ目は、異星のストーンヘンジです。反転した Radial GradientShaper で整え、これを Cellular3DNormalizeHeight Remap を有効)に入力します。同じベースを別の Shaper で「帽子」状に変形し、その出力を Gap 入力に接続して最大値にすると、エッジ側は 0 のため隙間が生じず、中心に近づくほどギャップが広がり、中心へ向かって環状に隙間が拡大する独特の造形が得られます。
ここからは、映画に登場するスペーススラッグの巣穴のような大穴を Cellular3D で作る手順です。まず Radial GradientCellular3D に入力し、Normalize を有効にしてから Invert で反転し、強めの Blur を施して勾配をならし、Height Remap で深さを抑えたうえで Drop to Floor で地面に落とし込みます。続いて Erosion_2 を適用し、Erosion Scale=500Discharge Angle=1 に設定すると、浮遊土砂の堆積が途中で止まらず底まで流れやすくなり、小丘が生じにくく、水理流の痕跡が強調されます。なお、Erosion_2 の堆積や降水の扱いは Gaea 2.x で強化され、領域指定やマスクによる制御が拡充されています。
次に、Thermal ShaperではScale を 5に設定し、Shape を締め方向(負寄り)かつ Influence を強めにして輪郭を鋭く整え、そのうえでStratifyを加えて地層感を与えます(上部はマスクで弱め、Spacing を微調整します)。さらにSandstoneをデフォルト中心で重ね、Seedを回して岩壁の欠け具合を選び、平坦に残った面にはごく小さくWarpを足します。続いてThermal 2Blend=Maxで用い、Sediment Removal=0.01として堆積の積み上げを主体に調整し、ここで取り出したDepositsAuto Levelして得たマスクをErosion_2Precipitation入力に与え、Downcutting を低め・Duration を長め・Bed Load を高め・Coarse Sediments を高めといった設定で、降水が当たる領域にだけ微細流路(Microflow)のディテールを追加します。
色と見栄えの仕上げでは Choke Point → Texture Base → SatMap というチェーンを使い、たとえば岩系の SatMap(例として“524”といったプリセット番号)を選んで彩色します。Saturation / Lightness を整え、Curve でコントラストを上げてブレンドします(Curve はモノクロプレビューに見えても色のコントラストにも影響するため、強すぎる場合は HSL で戻します)。最終確認には LightX を使ってレンダリングします。ここではSun Intensity=1.5、Ambient Intensity=0.5、Air Density=0 として宇宙空間に近い反射の少ないハイコントラストのライティングにし、岩のディテールがくっきり見えるようにしています。SatMap は実衛星データ由来の多数のカラーマップを内蔵し、LightX はハイトフィールド表示に最適化したレンダラーとしてベイクや各種パスの取得ができます。
さらに細部が必要な場合は、DCC 側でバンプやディスプレイス、そしてリメッシュの活用を検討してください。
最後にもう一度強調すると、Cellular3DGaea の発想を広げてくれるノードで、どんな形が作れるかという固定観念を良い意味で裏切ってくれます。実際に Gaea では SeamlessRepeat によるタイリングや Transpose による表面転写といったワークフローを組み合わせることで、制作スピードと表現の幅を両立できます。創造的に試行錯誤すればするほど、このソフトは多くを返してくれます。次回は可能であれば「Trees」ノードを取り上げますが、準備状況によっては別のテーマになる場合もあります。
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