ー Dylan Sisson氏のインタビュー  ー

私たちは『トイ・ストーリー5』のファイナルフレームのレンダリングに、RenderMan XPU(バージョン27)を使っています。XPU を最終フレーム用レンダラとして確立し、RIS を置き換えられるよう取り組んできました。


RenderMan XPU の新機能

RenderMan の歴史の中で、私たちは常に手元のハードウェアの潜在力を最大化することを目指し、その時々の環境に最適なアーキテクチャを作ってきました。初期の RenderMan はスキャンラインレンダラでした。メモリと計算資源が限られていたため、スキャンライン方式が非常に効率的だったからです。

現在は GPU と CPU の両方で大容量メモリと強力な計算能力が得られます。そこで GPU を活用するために、XPU という新しいアーキテクチャを設計しました。

RenderMan XPU は CPU、GPU、またはその両方でレンダリングできます。CPU でも GPU でも同じピクセルを生成できる点が特徴です。アーティストは自分の CPU と GPU を活用し、フレームを GPU ベースのレンダーファームにも CPU ベースのレンダーファームにも送れます。どちらでも柔軟に運用でき、そこを意識して切り替える必要はありません。

次世代レンダリングとして、CPU のみで RIS と XPU を比較しても、RIS より XPU のほうが高速です。XPU は単純に速いレンダラで、テストライティングもしやすく、CPU だけでも高速に動作します。GPU を使う必須性はありませんが、使えばさらに速くなります。

XPU でのレンダリングでは、キャッシングやプリコンピュート、ベイクは行いません。完全な光輸送のシミュレーションを行うことが RenderMan の強みであり、Maya、Houdini、Katana、Blender といった対応 DCC 全体で、USD をバックボーンに据えて実現しています。USD アセットさえあれば、どこへでも持ち運べます。

RIS から XPU への移行

『トイ・ストーリー5』の制作中、私たちは当初 RIS でレンダリングを開始し、その後、同じシェーダ、同じライト、同じアセット、同じシーンをそのまま使って、RIS の代わりに XPU へ切り替えてレンダリングできました。スタジオとしてもシームレスに移行できます。

かつて Reyes レンダラからモダンなパストレーサである RIS へ移行した際は、各スタジオがパイプラインを書き直し、新しいシェーダやシーン、ライトを用意する必要がありました。しかし RIS から XPU への移行では何も変える必要がありません。より良いレンダラへ置き換えるだけです。

高速なマシンならさらに速くレンダリングできますし、RIS を使っているスタジオでも、XPU は CPU のみでも効率的で高速です。GPU でも非常に高性能です。唯一の制約は主にメモリです。シーンが GPU メモリに収まるなら、そのまま GPU でレンダリングできます。これは長らく課題でしたが、NVIDIA の Ada/Blackwell 世代の新しいカードにより、メモリ制約は小さくなりつつあります。

非商用版と XPU

非商用版にも最新の XPU が含まれます。コミュニティの皆さんが自由に試し、自分の時間で学べるようにすることで、スタジオでの就業や制作現場のパイプラインへの参加時にアドバンテージになります。

プロダクションと AI

プロダクション制作では、監督が画面のすべてのピクセルを創造的にディレクションできる必要があります。そのため、私たちは各ピクセルを完全にコントロールできなければなりません。現状の生成 AI のような手法では、それは実現できません。スタジオの創造的ディレクションが必要な現場では有用ではないのです。

将来を見据えると、AI 技術はデノイズやニューラル転送のような特定用途のツールとして用いられる可能性がありますが、最終ピクセルの生成ではなく、あくまでツールとしてのアプローチになるでしょう。

RenderMan の今後

直近の目標は、『トイ・ストーリー5』の全ショットを XPU で確定させることです。いまはピクセルを完璧にするための最終調整に取り組んでおり、それが固まって10月にローンチできたら、次は RenderMan 28 に移ります。これまではまず機能を出し切る(feature complete)ことを最優先してきたので、その後は最適化に注力し、さらに将来的にはリアルタイム系のソリューションなど、より先のイノベーションにも目を向けていく予定です。

第12回 RenderMan チャレンジ

RenderMan Art Challenge Shield

第12回 RenderMan チャレンジ「First Contact」を開始しました。

作品『星つなぎのエリオ』とも少し関連しています。私たちのアセットを使い、「未知との遭遇(ファーストコンタクト)」をテーマに、ホラーでもコメディでもドラマでも、好きなジャンルで物語を作ってください。

今年のチャレンジでは、賞品に加えていくつかの新要素を用意しています。最終フレームのレンダリングに使えるクラウドコンピュート、そして RenderMan の使い方から魅力的なキャラクターデザイン、独自のアートボイスの育て方までをカバーするメンタープログラムです。スキルを伸ばしたい方は誰でも参加できます。入賞しなくても「勝ち」を得られます。参加を考えている方へのアドバイスは「今すぐ始めること」

締切は 11 月 10 日です。かけた時間が多いほど、良い結果に近づきます。

First Contact” Art Challenge

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エイリアン・ティーポット!

新しいティーポットは「エイリアン・ティーポット」です。小さなアンテナが付いていて、グリーン版とグレー版があります。RenderMan XPU やその XPU ファイルを『星つなぎのエリオ』と結び付けるモチーフとして、クラシックな“エイリアン・ティーポット”が最適だと考えました。