Houdini 21.0は、SIGGRAPH 2025 で公開された基調講演とスニークピークを軸に、アニメーション/KineFX、Pyro/MPM、Solaris/Karma、Copernicus(COPs)、Vulkanビューポート、そして機械学習(ML)まで、主要レイヤを実務投入レベルへ磨き上げた大型アップデートとなります。キーワードは「プロシージャル × アセット化 × ライブレビュー」。検証から確定(ベイク)までの反復時間を短縮し、意思決定の速度と再現性を底上げします。公式発表では8月27日に公開されました。(日本時間)


アニメーション/リギング:カタログ運用とNLE的編集で“反復が速い”

KineFXはMotion Mixerとアニメーション/クリップカタログを中核に、トラック・クリップ単位のノンリニア編集と、ポーズ/モーションアセットの再利用を両立。Autorig Builderや新モジュール群(四肢・手足・首・スパインv3など)で立ち上げが速く、APEXベースの環境で拡張もしやすくなりました。さらにMetaHumanの取り込み(Epic×SideFXの公式プラグイン)が導入され、ゲーム⇔映像のアセット往来が現実的になってきました。

キャラクターFX:OTiS+MLデフォーマで“崩れにくい”を少ない試行で”

新しいOTiS(Organic Tissue Simulation)はGPU対応の有機組織ソルバ。筋肉・脂肪の連成、体積を保つコリジョン、初期交差への頑健性を意識した設計で、FEM級の物理忠実度とセットアップ容易性のバランスを確保する。Otto(筋肉/組織を含む実用ヒューマノイド)とMLデフォーマも提供され、Armature Deformやショットスカルプトと併用することで、フル再シム(ショット全体の再シミュレーション)を避けつつ最終画を調整する運用が取りやすくなります。

Pyro/MPM:低解像で“合意”→MLで“高精細”の分業”

Copernicus(COPs)にはスパースGPU Pyro、反応拡散(Reaction Diffusion)、インタラクティブハンドルが追加されました。2D/軽量環境でルックを先に詰め、SOP/DOPへ落とし込む短い検証ループを構築できます。Pyroはプリセットレシピに加え、ML Upresで低解像シムから高品質な煙へ補完が可能です。。MPMはデブリ放出や表面張力、より制御しやすいフローで再現性が向上し、レンダ可能形状への“出口(サーフェシング~出力までの後処理が体系化)も整理されました。

Solaris/Karma:Shot Builder × ギャラリーで“レビューの一次情報”を一元化”

SolarisはShot Builderとレンダーギャラリーへのライブレンダにより、USDレイヤとレビューヒストリを同じ土俵で扱えます。KarmaはHydra 2対応とGaussian Splats(3DGS)の初期対応が搭載され、実験的ワークフローの検証もしやすくなりました。テクスチャベイクはCopernicus/Karma双方からアプローチでき、どの段階でプロシージャルを固定化するか柔軟に選択できます。

ビューポート/UI:Vulkanが“実運用が可能な完成度”

VulkanビューポートはOpenGL同等のパリティ+上回る表現を目指し、リアルタイムAOやジオメトリライトをサポートしました。macOSはMoltenVKで動作するため、クロスプラットフォームでの見えの統一も進んでいます。日常作業で使うグラフエディタや3Dハンドルの使い勝手を磨き上げ、操作時の小さな“引っかかり”を減らしました。

機械学習(ML):Houdini内で“学習〜推論”までを一気通貫

スタイル転送/スキン&組織変形/点群サーフェシング/Pyro UpresといったMLツールをネイティブ搭載しています。独自データでの学習ノードも揃い、PDG(TOPs)と組み合わせてバッチ化・再現ログまでHoudini内で完結できます。Pyro用 volume upresser や MLデフォーマが公式に提供されます。これにより、まず低解像で形を決め、その後 ML で細部(高解像度感)を補う段階的なワークフローを組みやすくなりました。

DCC連携/Engine:UnrealのPCG統合ほか

Houdini Engineまわりでは、Unreal 5.5/5.6・Unity 6.0/6.1・Maya/3ds Max 2026対応がアナウンスされ、UnrealのPCGグラフでHDAを直接利用できる統合や、Unreal向けのAsset Editorの強化がされています。各DCC間での橋渡しは、USDとOCIOの標準化でより扱いやすくなっています。

システム要件トピック:Apple Silicon前提、x86-64-v3 へか

項目 要件
macOS Apple Silicon必須(Intel Macは非推奨)
Windows / Linux x86-64-v3準拠CPU(AVX/AVX2対応)
GPU OpenGL 4.0対応、
VRAM 12GB以上を強く推奨
Karma XPU CPU+NVIDIA OptiX対応GPUで動作(MacはCPUレンダ)
導入前確認 CPU命令対応・VRAM容量・ドライバ・OSを要確認

まとめ

Houdini 21.0 は、「試す → 確かめる → 仕上げる」までの工程を短縮することを主眼としたアップデートです。**Motion Mixer とアニメーションカタログ**によりモーションアセットの再利用と編集が効率化され、**OTiS と ML デフォーマ**は、キャラクターの破綻を抑えた自然な変形を実現します。エフェクト面では **GPU 対応の Pyro** と **Vulkan ビューポート**によりプレビュー性能が向上し、**USD/Karma(Hydra 2)** の連携によってレビューと共有のワークフローが整理されました。さらに **ML ツール群**は、低解像で形を決めた後にディテールを補う段階的な制作手法を支援します。 全体として、**試す→確かめる→仕上げる**までがスムーズになり、学習用途から実制作まで作業工程がはかどります。使い始める際は、ご自身の環境や目的に合う機能から順に試し、必要に応じて運用ルールを整えると安心です。